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太極拳の特徴「重力に適応する」「脊髄+馬尾神経損傷後の修練の体験から」
 太極拳のレポート後半です。太極拳の歴史については、次回にします。
重力に適応して動く①
(身体の中心ラインを重力方向に沿わせる)
人は、地球上に生きている以上、常に重力を体に受けてその上で、体を動かして活動しています。
 重力の中で、重力に適応し上手に動くにはどうしたらいいでしょうか?
まず地球上で人は直立していますが、例えば子供の頃ウルトラマン消しゴムやキン肉マン消しゴムを2本足で立たせようとして、なかなか立たないのを感じた方もいると思います。人は直立二足歩行するために、2本足の間の狭い面で、長細い身体を立たせて支えバランスをとっています。
重力下で、人間のように長い体が二本足で立っているということは、実はかなり難しいことなのです。地球上の生物の長い歴史の中では、生物が地上にあがっていき2足歩行になったのはつい最近のことです。
太極拳では、まず体の長軸が、重力の働く方向を基準にしたラインに対し、傾かないことを重視します。脊柱の前側(腹側)のラインを体の上下における中心ライン(中心軸)とし、それを重力方向に沿わせることを重視します。
 野球の応援団がもっている大きい旗をもつことを想像してください。旗の支柱が傾いたら、旗を持つ人は相当な力で反対側に引き上げないと旗は倒れていってしまいます。つまり軸が傾くと、傾いた反対側に引き上げるようなよけいな筋収縮が必要になってしまうのです。
太極拳の(太極拳の動作中は、そのことに意識を向け守るというような意味である)要訣の一つに、「虚領頂勁」(首筋をスッとまっすぐ立てて、軽く顎を引き)、「立身中正」(背骨のラインを重力方向に対し、真っ直ぐに立てる)というものがあります。それを動作中は、基本的に守ります。頭のてっぺんの点から、体の中を通り、体の重心に近い丹田(へそ下3寸)を通り地球の中心まで引っ張られる方向を意識して、動作中も基本的に身体の中心ラインが重力に引かれる方向に対して傾かないようにします。
重力下では、人の身体の中心ラインが傾くと、それを立て直すために身体の内部に大きな力(筋収縮による筋張力)を必要とするからです。
しかし、身体を真っ直ぐにしようとして、かちかちに身体を緊張させてしまっても、人は滑らかに体を動かせませんし、筋収縮を起こすことで身体の内部に重力と反対方向のベクトルが働き、重心が上がり、身体は外力に対しバランスを崩しやすくなります。
太極拳の指導では、身体の中心に近い脊柱が一つ一つ積み木のように積み重なっているようにイメージし、その積み木がまっすぐに積み上がっているだけの最小限の筋収縮となるように、それ以外の余計な力を抜くことを意識させるということがあります。
太極拳では、重力に引かれる方向を自分自身の感覚で感じ取り、それを基準にして、自身の体のアライメントを整えることをしていると言えます。しかし本当に真っ直ぐかどうか自分ではわからない場合が多いので他者にチェックしてもらうことをします。
リハビリテーションの世界では、脳卒中で主に身体の片方に障害が残った方へのアプローチとしてボバース法という理論があります。
ボバースの理論では、「身体のアライメントが崩れると、筋緊張のアンバランスが助長される」という考えがあります。重力に適応した身体の動かし方を考えた場合、「太極拳の体軸を重力方向に沿わせて動く、なぜなら身体の軸が傾くと、よけいな筋緊張が起ってしまうからだ」という考え方は、ボバースの考え方に似ているようにも感じます。
ボバースと違い太極拳では、自分で自分の身体に働く重力の方向を感じ取り、それを基準にして自身の身体の軸を整えることをし、他者にチェックしてもらいながら、自分の体を自己で調整し、自主管理します。

重力に適応するには②(むだな筋収縮をせず必要最小限の筋収縮で立ち、動く。ある姿勢を保つ)
太極拳では無駄な筋緊張を嫌います。筋収縮をすることによって、重力に拮抗する方向の力のベクトルが身体の中に生みだされ、重心が上がり身体が不安定になるからです。余計な筋緊張がなく、重力に身体をゆだねている状態、そして姿勢がある形をとっている時を、太極拳では重力に適応し安定した身体の状態とします。(ある形とは、脊柱が重力方向に沿い、肩・肘が落ち、胸の力を緩め背中・肩甲骨が開き、股関節と脚が乗馬をしているようにアーチ状になり力が抜けているような形です)
修練では実際に身体が安定しているかどうかを、他者に身体を持ち上げてもらったり、押してもらったりしてチェック・確認します。
必要以上の筋収縮は、身体の滑らかな動きを阻害しますし、過剰な筋収縮を続けると、血行が悪くなり、肩こりなどの原因になります。また、筋緊張が強いと身体の感覚が感じにくくなるために、身体と外部環境との関係性を上手く捉えることができなくなります。

人は、地球上にいる重力の影響化で身体動作をして生活しています。ただ立ち座っているだけでも、抗重力筋(下肢の筋や体幹の脊柱起立筋など重力に抗して身体を持ち上げる筋)の筋収縮が必要ですし、手を挙げる際も腕にかかる重さに抗して手を挙げているのですが。太極拳では、必要な最小限度の筋収縮を行い必要以上に筋収縮させないことを意識します、手を挙げる際も、腰、背中と体の中心から連動して動かしていくことで、末端の筋を過剰に収縮させないようにします。
 つまり地球の重力化にいるかぎり、抗重力筋の収縮によって身体を立てたり、首を立てたり、手を挙げたりする必要があります。しかし必要以上の筋収縮は重力に反発するような力を生みだし、重心が上がり、不安定になるためよくないと太極拳では考えています。それを実際に、自身の身体を通して納得しながら理解し、安定した身体と心の状態を目指します。

身体の感覚を意識し、重力・床からの反力などのベクトルを感じる 
人は、地球上で常に重力を身体に受けて、地球の中心に引っ張られながら、立ち座りまたいろいろな動作を行っています。しかし人は、日常で身体が重力に引かれている感じを、感じることは少ないと思います。転ぶ時、ジャンプして落ちるときには感じるかもしれませんが。当たり前すぎて、意識をしていないかもしれませんが、立っている時も座っている時も常に重力は身体に働いています。
太極拳では、筋緊張をゆるめて身体感覚に意識を向け、体が重力に引かれる感覚・床から返ってくる床反力などを感じ取り、その力を利用します。 
身体が重力に引かれている感覚は、力を抜かないとあまり感じられません。また一方で、重力を感じようと意識を向けることで、力が抜けてきます。
人が自分の身体の感覚がまったく感じられなかったり、感覚を認知できなければ、身体を動かし使うことができないように、重力もまたそれを感知し認知しなければ、重力にそって身体を動かすことも、自分の身体にかかる重さ、重力を使うこともできません。

 身体感覚で何を感じるか?
・ 体の各部位が緊張している感じ、それがゆるむ感じ
・ 重力・接地面からの床反力とその方向
・ 他者から受ける外部から入ってくる力のベクトル
等です。
○太極拳の修練には推手というものがあり、相手の前腕と自分の前腕を合わせて、腕をセンサーとして相手の力の起こりや方向を感知して、いなしたり、自分から押したりします。(推手では、相手の腕や身体制して崩し、自分の身体は安定したままでいるようにします)相手の力がどの方向に入って来ているかを感じ取り、その力に対処します。相手の力を下に流したり、いなしたりします。これは相手の力を感じ、自分の身体が安定していないとできません。

人は、
身体感覚に意識を向けることで→重力に引かれる感覚・外部から入ってくる力の方向・自己身体と外部環境との関係性を感知し認知し→その感覚を運動に利用できます
例えば、階段昇りの際、足を上に挙げようとがんばるよりも、段に踏み込んだ軸足を通して感じられる地面からの力を確実に感じて、腰・骨盤を上手く使って足を上げると楽に足が上がる感じがするかと思います。
 逆に、人は身体感覚を通じて、身体と外部環境との関係性を感じ取り、運動に利用できなければ、運動が不適切なものになります。運動が不安定・不適切な場合、余計な筋緊張もうまれやすくなります。身体を不必要に緊張させるということは、感覚を感じにくくします、感じられなければ、感覚を運動に利用できず運動はますます上手くいかなくなります。
 
以下のような発想をし、意識をして体を使えば、健常者の方が日常生活やスポーツの運動時により合理的な身体が使えるようになったり、何らかの障害をもった方の動作時のバランス・安定性の向上に効果があると思います。
○ 筋緊張をゆるめて、重力に引かれる感覚、流体の感覚、外部との接触面の感覚など、身体感覚に意識を向け、感じ取る。
○ 人は身体感覚を感じることができ、その感覚を通して環境と身体との関係性を知り、運動する際に使っています。
○ 体を緊張させるか、緊張をゆるめるか自分で選ぶことができる。
○ 体の中心部から動き、身体の末端へ動きを波及させていく。
 まとめ
身体の感覚に意識を向け感じとり、重力にも適応していこうという身体の扱い方は、合理的な身体運動の一つの方向性を示していて、現代の生活でも応用が利くように思います。

追記
私の体験から(神経原因による筋緊張の異常がある場合)
私が馬尾神経損傷(一部脊髄神経も損傷有り)を負った、初期の頃は2年くらい、力を抜けといっても、(神経の異常で)身体が勝手にぴくぴくっと筋収縮を起こしてしまうので、抜こうと思っても勝手に体が緊張してしまい、力を抜くことはできませんでした。
大腿の前面の伸筋やぴくぴくっと勝手に収縮を起こしたり、大腿の外側の筋、腰の脊柱起立筋がばりばりに張ってしまって、力を抜くことはなかなかできない状態でした。
 つまり、痙性などの神経の原因による、異常筋緊張がおきている場合は、力を抜くことは困難です。
その後、時が経つにつれ、だんだん、腰のバリバリの緊張が溶けてきました。
また、立位で体に意識を向けると、下腿三頭筋、ハムストリングスが張って筋緊張の感覚が強すぎて気になり、しかも力が抜けない状態でした。
このような状態で力を抜こうとしても、なかなかできず、ストレスを感じることが多いと思います。

 その中でも、立ちながら胸、腹、股関節の緊張をゆるめる意識をもちながら、膝を曲げすぎずにまっすぐ立つ、ということを意識することで、
腰など緊張を緩めることができる部分についてはゆるみ、膝まわりについても緊張しなくても立てる形を少しずつさぐることができます。
この場合は、正しい姿勢をとっているかどうか他者にチェックしてもらうことが非常に重要になってきます。
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テーマ : 心と体にいいことはじめよう!
ジャンル : 心と身体

プロフィール

あさ

Author:あさ
都内在住 埼玉県新座市出身
神経損傷で、足に麻痺が残りましたが
以前アクアスロン(スイム:200m/ラン:3000m)にでました→足裏にまめができました。

ホノルルマラソンに出る予定
歩くことが好き
○趣味 太極拳 ジャンベ

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